生成AIのリスクとは?7分類と法人の対策【2026年】

この記事の結論
・生成AIのリスクは情報漏洩・著作権侵害・ハルシネーション・プロンプトインジェクション・ディープフェイク・AIバイアス・シャドーAIの7種類に分類できる

・IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」でAIリスクが組織向け3位に初選出。企業のAIセキュリティ対策は「任意」から「必須」の段階に入った

・対策はガイドライン策定・エンタープライズ版導入・DLP/CASB・従業員教育・シャドーAI統制・監査ログの6本柱を組み合わせるガバナンス型アプローチが有効

生成AIを業務に取り入れる企業が急増するなか、「どこまで使って良いのか」「情報漏洩が心配」と悩む担当者は少なくありません。本記事では、生成AIのリスクを7種類に整理したうえで、法人がすぐに着手できるセキュリティ対策を体系的に解説します。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の最新発表や実際の事例も交えながら、自社のAIガバナンス整備に役立つチェックリストも提供します。

目次

生成AIの主要リスク7分類

生成AIの導入・運用には、大きく分けて7種類のリスクが伴います。自社の利用状況と照らし合わせながら確認してください。

リスク①:機密情報・個人情報の漏洩

生成AIに業務情報を入力すると、そのデータがモデルの学習や改善に使われる可能性があります。無料・個人向けのAIサービスは特に、入力内容をサービス改善に活用する利用規約が多く、顧客情報・技術情報・未発表製品情報などを入力することは深刻な情報漏洩につながります。ジョーシスの調査(2026年)によると、36%の従業員が機密情報をAIツールにアップロードした経験を持ち、70%の組織が社内のAI利用状況を把握できていないと回答しています。

リスク②:著作権・知的財産権の侵害

生成AIが出力したコンテンツには、学習データとして取り込まれた第三者の著作物が反映されているケースがあります。AIが生成した文章・画像・コードをそのまま業務に使うと、意図せず他者の著作権を侵害するリスクがあります。また、AIを活用して社内で生み出した発明・技術情報がモデルに学習された場合、自社の特許・営業秘密が漏洩する懸念もあります。

リスク③:ハルシネーションによる誤情報の業務利用

生成AIは「もっともらしい嘘」を自信を持って出力する「ハルシネーション(幻覚)」という特性を持ちます(※ハルシネーション=AIが事実に反する情報を正確な情報として生成してしまう現象)。法令解釈・財務数値・医療情報など、正確さが求められる場面でAI出力をそのまま使用すると、誤った意思決定につながるリスクがあります。出力内容は必ず一次情報と照合するファクトチェックが必要です。

リスク④〜⑦:プロンプトインジェクション・ディープフェイク・AIバイアス・シャドーAI

上記3つに加え、以下の4種類のリスクも法人として見落とせません。

リスク種別概要主な影響
プロンプトインジェクションAIへの指示文に悪意ある命令を埋め込み、システムを誤動作させる攻撃(※プロンプト=AIへの指示文)データ漏洩・システム不正操作
ディープフェイク経営者の声・映像を生成AIで偽造し、振り込み詐欺等に悪用(※ディープフェイク=AIによる偽造音声・映像)金融詐欺・ブランド毀損
AIバイアス学習データの偏りが出力に反映され、差別的な判断を行う可能性法的リスク・信頼喪失
シャドーAIIT部門の管理外で従業員が使う非公認AIサービス(※シャドーAI=組織管理外のAI利用)管理不能なデータ漏洩リスク

シャドーAIの詳しいリスクと対策については、「シャドーAIとは?5大リスクと企業が取るべき対策」も参考にしてください。

生成AIのリスクは「情報漏洩」だけではありません。著作権侵害・ハルシネーション・シャドーAIなど複合的なリスクを横断的に管理する体制が必要です。

IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」でAIリスクが3位に初選出

2026年1月、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向け3位に初選出されました。従来の脅威と並んでAIリスクが公的機関の脅威認定リストに加わったことは、企業に対して「AIセキュリティ対策が任意ではなくなった」というメッセージを示しています。

「AIの利用をめぐるサイバーリスク」の主な内容

IPAが選出した組織向け上位脅威と、AIリスクの具体的な内容を以下に整理します。

順位脅威選出状況
1位ランサム攻撃による被害11年連続
2位サプライチェーンや委託先を狙った攻撃8年連続
3位AIの利用をめぐるサイバーリスク初選出
4位システムの脆弱性を悪用した攻撃9年連続
5位機密情報を狙った標的型攻撃11年連続

AIリスクが選出された背景として、生成AIを使ったフィッシングメールの大量生成・ビジネスメール詐欺(BEC)の高度化・社内情報の意図しない学習などが挙げられます。また、IBMのデータ侵害レポート(2025年版)によると、AIを悪用したサイバー攻撃による侵害は全体の約25%を占め、1件あたりの平均被害額は600万ドル(全体平均499万ドルを約100万ドル上回る)に達しています。

シャドーAIが組織のリスクを拡大する仕組み

シャドーAIが厄介なのは、企業が「知らないうちに」リスクにさらされる点です。従業員が善意で生産性向上のために無料AIツールを使い始めると、企業ポリシーの適用外で機密情報が処理され、ログも残りません。前述のジョーシスの調査では70%の組織が社内のAI利用実態を把握できていないと回答しており、「禁止しているから大丈夫」とは言えない状況が浮き彫りになっています。生成AIのビジネス活用事例と導入ステップの全体像は、「生成AIのビジネス活用事例20選」でも解説しています。

生成AIリスクを放置した場合の企業への影響

リスクを管理しないまま生成AIの利用が広がると、法的・経営両面でどのような被害が生じるのかを整理します。

情報漏洩による法的・財務的リスク

顧客の個人情報や取引先の機密情報が生成AIサービスを通じて漏洩した場合、以下のリスクが現実となります。

  • 個人情報保護法違反:適切な安全管理措置を怠った場合、行政処分(課徴金・措置命令)の対象となる
  • 損害賠償責任:顧客・取引先からの損害賠償請求。1件のインシデントで数億円規模になるケースも
  • 営業秘密の喪失:不正競争防止法上の問題と事業競争力の低下。競合他社に技術情報が流出するリスク
  • 業種固有のコンプライアンス違反:金融・医療・製造など規制業種では、業法に基づく行政処分も

信頼喪失とブランドへの打撃

情報漏洩・著作権侵害が発覚した場合、直接的な財務損失以上に深刻なのがブランド毀損です。顧客・取引先・採用市場における信頼の回復には長期間と多大なコストがかかります。特に、自社のデータが競合他社の学習データとして使われる可能性は、競争優位の根本的な喪失につながります。

生成AIリスクへの対策は「コスト」ではなく「事業継続のための投資」です。対策を後回しにするほど、対処にかかるコストと被害規模は大きくなります。

法人が今すぐ取るべき6つのセキュリティ対策

リスクの実態を把握したうえで、法人として具体的に何をすべきかを解説します。「禁止」ではなく、「安全に使える環境の整備」を基本方針として取り組みましょう。

対策①:社内ガイドラインの策定

最初に着手すべきは、生成AIの社内利用に関するルールの文書化です。ガイドラインには少なくとも以下の要素を盛り込みます。

  • 利用を許可するAIツールの一覧(承認済みサービスリスト)
  • 入力してはいけない情報の種類の明確な定義(機密レベル分類:社外秘・部外秘・一般情報など)
  • 生成物の利用前に必要なファクトチェック・著作権確認の手順
  • 違反時の報告フローと処分規程

生成AIガイドラインの策定手順については、「生成AIガイドライン策定の完全手順と社内雛形」で詳しく解説しています。

対策②:エンタープライズ版AIツールへの移行

無料・個人向けのAIサービスから、法人向けのエンタープライズ版へ移行することが根本的なリスク軽減策です。主な相違点を以下に示します。

観点無料・個人版エンタープライズ版
入力データの学習利用あり(利用規約による)なし(契約で保証)
データ保管場所事業者の共有サーバー企業テナント内(専用領域)
アクセス制御個人アカウント単位SSO・役職ベースの権限管理
監査ログなしあり(管理者確認可)

対策③:DLP・CASBによる技術的防御

ガイドライン策定だけでは従業員の行動をすべて管理することはできません。DLP(Data Loss Prevention=情報漏洩防止ツール)は、機密情報が外部へ送信される際に自動でブロック・アラートを出します。CASB(Cloud Access Security Broker=クラウドアクセスセキュリティブローカー)は社員が使用するクラウドサービスを可視化・制御するツールで、シャドーAIの実態把握にも有効です。これらを組み合わせることで、ガイドラインを技術的に補完できます。

対策④〜⑥:教育・シャドーAI統制・監査ログ

技術的な対策と並行して、以下の3つの取り組みも重要です。

対策内容実施タイミング
④ 従業員教育生成AIのリスク・機密情報の判断基準・ハルシネーションへの対処法の研修導入前+年1〜2回の定期研修
⑤ シャドーAI統制CASBやネットワーク監視による未承認ツールの可視化→リスク評価→承認リスト化または禁止措置初回調査後、月次モニタリング
⑥ AI利用ログ監査エンタープライズ版ツールのログを月次で確認。不審なプロンプト・大量入力等を検知月1回以上の定期監査

生成AIリスクへの対応チェックリスト

以下のチェックリストを使って、自社の現状を確認してください。新規ツール導入前と運用中の定期確認の2段階で整理しています。

新規AIツール導入前の確認事項

確認項目確認内容
データ学習の有無入力データがモデル学習に使われないか
データ保管地域サーバーが国内・EEA等の規制対応地域か
暗号化対応通信・保存データの暗号化が保証されているか
アクセス制御役職・部門単位の権限設定が可能か
監査ログ利用状況のログ取得・エクスポートが可能か
契約・SLAセキュリティ基準・インシデント対応が契約に明記されているか
著作権方針出力コンテンツの著作権帰属が明確か
サードパーティ連携連携する外部サービスのセキュリティ審査が完了しているか

運用中の定期確認項目

  • シャドーAIの新規出現確認:CASBやネットワーク監視で未承認ツールの使用を月次確認
  • ガイドライン遵守状況の確認:定期研修・理解度テストを半年〜年1回実施
  • 利用規約・セキュリティポリシーの更新確認:使用中のAIツールの規約変更を月次チェック
  • インシデント・ヒヤリハット事例の収集:報告しやすい仕組みを整備し、対策へ反映(随時)

チェックリストは「一度作って終わり」ではなく、AIツールの仕様変更・新たな事例の発生に合わせて定期的にアップデートすることが重要です。

まとめ:生成AIリスクを管理して安全な活用環境を整備する

本記事では、生成AIのリスクを7つに分類し、法人として取るべき対策を解説しました。

生成AIの利用を一律に禁止することはビジネス上の機会損失につながります。情報漏洩・著作権侵害・ハルシネーション・シャドーAIなど7種類のリスクを正確に把握し、エンタープライズ版の導入・ガイドライン整備・従業員教育・技術的防御を組み合わせた「ガバナンス型」のアプローチが最も現実的です。IPAが2026年版10大脅威にAIリスクを初選出したことは、企業のAIセキュリティ対策が「任意」から「必須」に変わったことを示しています。まずは社内の現状把握とガイドライン策定から着手し、段階的に対策を強化していきましょう。

生成AIのリスク管理や社内ガイドライン整備を支援する専門サービスとして、株式会社KAGEMUSHAのAIコンサルティングでは、ガイドライン設計から従業員研修までを一貫してサポートしています。

生成AIのリスクとは?7分類と法人の対策【2026年】

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この記事の監修者

株式会社BuzzConnection/株式会社KAGEMUSHA 代表取締役CEO

2021年に独立し、株式会社BuzzConnectionを設立。複数の事業を運営し、現在はAIを活用したWebアプリケーションの開発、運用や生成AIの普及を目的としたセミナー研修の開催など多角的に活躍している。
2023年4月に株式会社KAGEMUSHAを創業。AI事業に大きく事業を展開。
AIアバターやデジタルヒューマン、AIチャットボット、AI研修など幅広い視点からAIの業務効率化を支援。

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