この記事の結論
・n8nはブロック(ノード)を組み合わせ、業務プロセスを自動化できるワークフロー作成ツール
・n8nはオンプレミスでの構築ができ、自社データを扱う際の安全性も高い
・n8nは400種類以上のアプリやデータと連携できるので、自由度の高い設計を実現できる
最近、業務効率化や生産性向上を目指す企業の間で、ワークフロー自動化ツールの導入が加速しています。中でも「n8n(エヌエイトエヌ)」は、オープンソースでありながら高い柔軟性と拡張性を持ち、ノーコード/ローコードで複雑な自動化を実現できることから注目を集めています。
しかし、「n8n」で具体的にどのようなことができるのか、導入形態にはどのような選択肢があるのかなど、まだ十分に理解されていない部分も多いのが現状です。
本記事では、そんな「n8n」の概要から、導入形態の比較・具体的な活用方法までを網羅的に解説します。
BuzzAIMediaでは、n8nを使用して様々な業務を自動化するためのワークフロー作成方法を解説している記事を掲載しています。
実際に作成してみたい方は、こちらの記事もご覧ください。




本城 賢人
(株式会社KAGEMUSHA / 株式会社BuzzConnection 代表取締役CEO)
n8nやDifyなどのノーコードツールを活用し、上場企業を含む数十社の業務改善・業務効率化を支援。
X(Twitter)をはじめとするSNSでは「AI活用専門家」として、n8nで様々な業務を効率化する具体的な方法を発信中。
「n8n」とは?

n8nは、オープンソースのワークフロー自動化ツールです。プログラミングの知識がなくても、視覚的なインターフェース(GUI)上でブロック(ノード)を組み合わせて、複雑な業務プロセスを自動化できます。

Webサイトのフォーム入力から顧客データのCRMへの自動登録、SNSへの投稿、社内システム間のデータ連携など、幅広い業務を効率化することが可能です。
近年では、単なるワークフローの作成に留まらず、AIとの連携を強化し「AIオートメーション」のプラットフォームとしても進化を遂げています。これにより、人が行っていた判断や複雑な情報処理も自動化の対象となり、より高度な業務変革を支援します。
n8nの読み方
n8nの読み方は「エヌエイトエヌ」です。
「n8n」はもともと「nodemation」(ノード+オートメーション)という造語が短縮された言葉で、「〜にする」という意味を持たせる「ate」が「エイト」と読まれることから、同じ読み方をする英数字の8を当てはめ、「nodemation」の両端のnと組み合わせて「n8n」となりました。
ただ、中には「エヌハチエヌ」と、数字部分を日本語読みする企業もあります。
n8nの特徴・強み
n8nならではの特徴や強みを解説します。
n8nの特徴・強み
・オープンソース、セルフホストの自由度と拡張性
・豊富な連携サービスと柔軟なカスタマイズ性
・ノーコード/ローコード対応
オープンソース・セルフホストの自由度と拡張性
n8nの最大の特長は、オープンソースであることです。これにより、以下のようなメリットが生まれます。
- オンプレミスでの運用が可能: データを自社のサーバー内で管理できるため、セキュリティ要件が厳しい企業でも安心して導入できます。データ主権を確保し、外部サービスへのデータ送信を最小限に抑えることが可能です。
- ソースコードの改変・カスタマイズの自由: 必要に応じて、自社の特定の要件に合わせてコードを改変したり、独自のノードを作成したりすることができます。これにより、市販ツールでは対応しきれない複雑なニーズにも柔軟に対応できます。
- コスト効率: 基本的に無料で利用できるため、初期費用や月額費用を抑えながら自動化を進めることが可能です。
豊富な連携サービスと柔軟なカスタマイズ性
n8nは400種類以上のアプリやサービスと連携できる豊富なノードを提供しています。
主要なSaaS(Slack, Google Sheets, Salesforce, HubSpotなど)はもちろん、データベース、ファイルストレージ、クラウドサービスなど多岐にわたります。
- HTTPリクエストノード: 連携したいサービスがリストにない場合でも、APIを通じてHTTPリクエストを送信することで、ほぼ全てのWebサービスと連携が可能です。
- カスタムノード: JavaScriptのスキルがあれば、独自のノードを開発してn8nに組み込むことができます。これにより、企業の特定システムとの連携や、高度なデータ処理も柔軟に実現します。
ノーコード・ローコード対応で開発者以外も活用可能
視覚的なドラッグ&ドロップ操作でワークフローを構築できるため、プログラミング経験のないビジネスユーザーでも直感的に自動化プロセスを作成できます。
一方で、JavaScriptによるコードノードを組み合わせることで、より複雑なロジックや高度なデータ処理も実現可能です。これにより、IT部門とビジネス部門が連携し、それぞれの専門性を活かした自動化が加速します。
n8nで何ができる?具体的な活用事例と業務自動化のヒント
n8nを利用することで、これまで手作業で行っていた多くの業務を自動化できます。例えば、以下のようなことが可能です。
n8nで自動化できる業務
・データ収集と加工: ウェブサイトから情報を収集し、スプレッドシートに整理する
・通知の自動化: 特定の条件を満たした場合に、Slackやメールで関係者に通知を送る
・API連携: 異なるSaaSツール間でデータを同期させたり、特定の操作を自動実行したりする
・定型業務の効率化: 請求書の発行、レポート作成、顧客へのフォローアップメール送信などを自動化する
また、さまざまなツールと連携が可能なので多種多少な業界・業種の業務を自動化できます。
n8nで連携できるツール(一例)
・コミュニケーションツール: Slack, Discord, Microsoft Teams
・クラウドストレージ: Google Drive, Dropbox
・CRM/SFA: Salesforce, HubSpot
・プロジェクト管理ツール: Trello, Asana, Jira
・データベース: PostgreSQL, MySQL, MongoDB
・その他SaaS: Google Sheets, Gmail, Twitter, GitHub, Shopify
サービスと連携させることで、例えば「Twitterで特定のキーワードを含むツイートがあったらSlackに通知する」「Google Sheetsの新しい行をトリガーに、CRMに顧客情報を登録する」といった自動化が実現できます。
これらの自動化により、各業界・業種で業務を自動化・効率化することができます。この見出しでは、各業界・業種での活用事例を紹介していきます。
営業・マーケティング部門での活用事例
- リード情報の自動収集・CRM連携:
- Webサイトの問い合わせフォームや広告からのリード情報を自動で取得し、SalesforceやHubSpotなどのCRMシステムに登録します。
- 特定の条件を満たすリードに対して、自動でウェルカムメールを送信したり、担当者にSlackで通知したりするワークフローも構築可能です。
- SNSへの自動投稿・効果測定:
- ブログ記事の公開時に、その内容を要約してX(旧Twitter)やFacebookに自動投稿します。
- SNSの投稿に対するエンゲージメントデータを定期的に収集し、Google Sheetsに記録するワークフローも実現できます。
- メール配信の自動化とパーソナライズ:
- 顧客の行動(商品購入、資料ダウンロードなど)に応じて、ステップメールやリマインダーメールを自動で送信します。
- パーソナライズされたプロモーションメールを、特定の顧客セグメントに一斉配信する業務も自動化できます。
メールマーケティングやインサイドセールス業務をn8nで効率化する方法はこちらの記事で解説しています。


経理・人事・総務部門での活用事例
- 請求書処理・データ入力の自動化:
- 取引先からの請求書メールを検知し、添付ファイルをGoogle Driveに保存。その後、OCRツールと連携して請求内容を読み取り、会計システムに自動入力します。
- 支払期日をSlackで担当者に通知するなどのリマインダー機能も追加できます。
- 従業員からの申請受付・承認フローの自動化:
- Google Formsや社内チャットツールからの休暇申請、経費精算などをトリガーに、承認者への通知、承認状況のデータベース更新、結果通知までの一連のフローを自動化します。
- 定型レポートの自動生成と通知:
- 月末に各部署から必要なデータを集計し、ExcelやGoogle Sheetsでレポートを自動生成。その後、PDFに変換して関係者にメールで自動送付します。
こちらの記事で、n8nを活用して人事の勤怠管理・月末集計業務を自動化する方法を解説しています。

IT開発・データ連携における活用事例
- API連携とデータ変換・加工:
- 異なるシステムのAPIからデータを取得し、n8n上で必要な形式に変換・加工して別のシステムに連携します。例えば、ECサイトの受注データを基幹システムに連携する際に、n8nでデータクレンジングやマッピングを行います。
- クラウドサービス間のデータ同期:
- Amazon S3にアップロードされたファイルを検知し、Google Cloud Storageにも自動で同期するなどのバックアップ・ミラーリング処理を自動化します。
- データベース間のデータ移行やリアルタイム同期にも活用できます。
- バックアップ処理の自動化:
- 指定した時間にサーバーやデータベースのバックアップを自動で取得し、クラウドストレージにアップロード。完了時に担当者に通知するワークフローを構築します。

近年、ChatGPTに代表される生成AIの進化は目覚ましく、業務自動化の可能性を大きく広げています。
n8nは、OpenAIやAnthropicなどのLLM(大規模言語モデル)はもちろん、最新のAIエージェント構築プラットフォーム「Dify.ai」とも連携し、より高度な「AI Automation」を実現できます。
n8nと他のノーコードツールの比較
業務を自動化するノーコードツールは多様であり、目的に応じて最適なツールを選ぶことが重要です。
この見出しでは、主要な競合ツールであるZapier・Make・Microsoft Power Automate、そしてAIエージェント構築プラットフォームであるDifyと比較しながら、n8nの特長やおすすめの用途を紹介します。


n8nが他のノーコードツールより優れいている点


n8nは、ZapierやMakeのようなSaaSツールが提供する限定的な機能と異なり、オープンソース・セルフホストにより無限のカスタマイズ性と複雑なシステム連携を実現します。
これにより大幅なコスト削減とデータ主権の確保が可能で、セキュリティ重視の企業に選ばれます。DifyがAIの「知性」を提供する一方、n8nはAIの判断を多様なシステム上で具体的なアクションへと「実行」する強力なオーケストレーション能力を持ちます。
つまり、Difyで構築したAIの「脳」を、n8nの「手足」で操り、SaaSや基幹システムを連携させる真のAI Automationが実現可能です。
結果として、n8nは高度な自動化をコスト効率良く、かつ自由に構築したい企業に最適な選択肢です。
n8nの始め方・使い方:実践的な導入ガイド
n8nを始めるには、大きく分けて「クラウド版(n8n Cloud)」を利用する方法と、「セルフホスト版」を自身の環境にインストールする方法があります。ビジネス規模や要件、社内の技術リソースに応じて最適な方法を選択しましょう。
選択肢 | メリット | デメリット | 向いているケース |
---|---|---|---|
クラウド版 | 手軽に開始できる、サーバー構築・運用不要、自動アップデート | コストがかかる、無料枠に制限、データがクラウド上 | 迅速に試したい、運用リソースがない、セキュリティ要件が緩い |
セルフホスト版 | 無料で利用可能、高い自由度、データ主権を確保 | サーバー構築・運用が必要、技術知識が必要、自己責任 | コストを抑えたい、高度なカスタマイズ、厳格なセキュリティ |
まずは手軽なn8n Cloudで試してみて、本格導入を検討する際にセルフホスト版を検討するというアプローチも有効です。
セルフホスト版のインストール手順(Docker推奨)
セルフホスト版は様々な方法でインストールできますが、手軽さと管理のしやすさから「Docker」を利用した方法を推奨します。
- Dockerの準備:
- お使いのOS(Windows, macOS, Linux)にDockerをインストールします。公式ドキュメントを参照してください。
- n8nのインストールコマンド:
- ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。これにより、n8nのDockerコンテナが起動します。
docker run -it --rm --name n8n -p 5678:5678 -v ~/.n8n:/home/node/.n8n n8nio/n8n
- -p 5678:5678: ホストのポート5678をコンテナのポート5678にマッピングします。
- -v ~/.n8n:/home/node/.n8n: n8nの設定ファイルやデータベースをホスト側のディレクトリに永続化します。
- 初期設定と管理画面へのアクセス:
- コンテナが起動したら、Webブラウザで http://localhost:5678 にアクセスします。
- 初期設定画面が表示されるので、管理者ユーザーの作成(メールアドレス、パスワード)を行います。
- 設定が完了すると、n8nのワークフロー編集画面が表示されます。
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n8nの基本的なワークフロー作成手順
n8nのワークフローは、トリガーと複数のノードを接続して作成します。
1. トリガーノードの設定


ワークフローの開始点となるノードです。例えば、「WebHook」(外部からのデータ受信)、「Cron」(スケジュール実行)、「Mailchimp」(特定のイベント発生)などを設定します。
画面左上の「Add first node」をクリックし、検索窓で「Webhook」「Cron」などと設定したいノードを入力して選択します。
設定画面で「Webhook URL」などを確認・設定します。
2. ノードの設定とデータマッピング


トリガーノードからプラスアイコンをクリックし、次のアクションとなるノードを追加します。例えば、「Slack」(通知送信)、「Google Sheets」(データ更新)、「Code」(JavaScript実行)などを選択します。
追加したノード同士を線で繋ぎ、データの流れを定義します。
3. ノードの設定とデータマッピング


各ノードをクリックし、それぞれの設定画面で必要な情報を入力します(例:Slackノードならチャンネル名やメッセージ内容)。
前のノードから受け取ったデータを次のノードで利用するには、「データマッピング」機能を使います。例えば、Webhookで受け取ったJSONデータの特定のフィールドを、Slackメッセージに埋め込むといった操作が可能です。
4. ワークフローの保存と実行


ワークフローが完成したら、右上の「Save」ボタンで保存します。
テスト実行するには、トリガーノードの「Execute Workflow」をクリックします。実際にワークフローを稼働させるには、右上のトグルスイッチをオンにします。
n8nに関するよくある質問 (FAQ)
Q: n8nは無料で使えますか?
A: はい、セルフホスト版のn8nは無料で利用できます。オープンソースなので、ソフトウェア自体に費用はかかりません。ただし、サーバーの運用費用や、クラウド版(n8n Cloud)を利用する場合は有料プランの料金が発生します。
Q: プログラミングの知識は必要ですか?
A: 基本的なワークフローの構築であれば、プログラミングの知識は不要です。ノーコードで直感的に操作できます。
しかし、より複雑なデータ処理やカスタムノードの作成、API連携の深い理解には、JavaScriptなどのプログラミング知識があると、さらにn8nを強力に活用できます。
Q: 日本語のサポートはありますか?
A: 公式の日本語サポートは現状ありませんが、英語の公式ドキュメントやコミュニティフォーラムが充実しています。
近年、日本国内でもn8nの利用者が増えており、日本語での解説記事やコミュニティも徐々に増えつつあります。
Q: セキュリティ対策はどのようにされていますか?
A: セルフホスト版を利用する場合、セキュリティ対策はユーザー自身が行うことになります。サーバーの適切な設定、定期的なアップデート、アクセス制限などが重要です。
n8n自体はオープンソースであり、コミュニティによるレビューが行われているため、透明性の高いソフトウェアと言えます。クラウド版ではn8n運営元がセキュリティ対策を行っています。
Q: どのくらいの企業がn8nを導入していますか?
A: n8nは世界中で数多くの企業や個人に利用されています。特に、スタートアップから大手企業まで、データ連携や業務自動化のニーズを持つ幅広い層で導入が進んでいます。
オープンソースであるため正確な導入数は把握しにくいですが、公式ブログや事例ページでは、具体的な導入企業名が紹介されることもあります。
まとめ:n8nを最大限に活用し、業務を加速させよう


本記事では、「n8n」の特徴から、クラウド版とセルフホスティング版の比較、具体的なワークフロー構築方法まで、幅広く解説しました。
n8nは、オープンソースならではの柔軟性と拡張性を持ち、ノーコード/ローコードで高度な業務自動化を実現できる強力なツールです。特に、セルフホスティング版を選択することで、コストを抑えつつ、自社の要件に合わせた自由な運用が可能になります。
しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、ツールの特性を理解し、ご自身の業務プロセスに合わせた適切な導入形態と活用方法を選択することが不可欠です。
まずは、n8nの公式サイトを訪れて、最新情報を確認したり、無料トライアルを試したりすることをお勧めします。
▼n8n公式サイト