Googleが提供するAIリサーチ・ノートツール「NotebookLM」。PDFやドキュメントなど、自分がアップロードした資料に基づいてAIと対話し、情報整理や理解を深められるこのツールに、画期的な機能「音声概要(Audio Overviews)」が登場し、注目を集めています。
「NotebookLMの内容を、移動中や作業中に聞けたら便利なのに…」
「資料を読むのが大変だから、AIに読み上げてほしい!」
そんなニーズに応えるのが、この「音声概要」機能です。しかし、これは単なるテキストの読み上げではありません。まるでラジオ番組やポッドキャストのように、2人のAIホストがあなたの資料の内容について対話形式で解説してくれる、ユニークで新しい情報インプットの形を提供します。
この記事では、
- NotebookLMの革新的な「音声概要」機能の仕組み
- 具体的な使い方(生成・再生・共有・インタラクション)
- 多言語対応やカスタマイズ機能などの特徴
- 学習や仕事が捗るメリットと活用例
- 利用する上での制限事項や注意点
などを、詳しく解説していきます。資料を「読む」だけでなく「聞く」ことで、あなたの情報収集・学習スタイルはどのように変わるのでしょうか? NotebookLMの音声概要機能の全貌に迫ります。
1. NotebookLM 音声概要(Audio Overviews)の仕組み:AIが資料を”語る”
まず、NotebookLMの「音声概要」機能がどのような仕組みで動いているのかを見ていきましょう。
音声概要とは何か?
この機能は、ユーザーがNotebookLMのノートブックにアップロードした複数の資料(PDF、Googleドキュメント、Webページのコピーなど)の内容を、AIが自動的に分析・要約し、それを「2人のAIホストが対話する形式」の音声コンテンツとして生成するものです。
なぜ「対話形式」なのか?
単にAIが一つの声でテキストを読み上げるのではなく、あえて2人のホストによる会話形式を採用しているのが大きな特徴です。これにより、
- 「聴きやすさと理解の促進」:単調な読み上げよりも変化があり、ラジオ番組やポッドキャストを聴く感覚で、内容に集中しやすく、理解が深まります。
- 「多角的な視点の提示」:AIホスト同士が質問し合ったり、異なる側面から解説したりすることで、トピック間の関連性や重要なポイントがより明確になります。
Geminiモデルの活用と「ソースに基づいた」応答
音声概要の生成には、Googleの高性能AIモデル「Gemini」が活用されています。Geminiがアップロードされた資料の内容を深く理解し、その要点や関連性を把握した上で、自然な会話スクリプトを生成します。
そして、NotebookLMの最も重要な原則である「ソースグラウンディング(情報源に基づいていること)」は、この音声概要機能にも適用されます。生成される会話の内容は、あくまでユーザーが提供した資料の内容を反映したものであり、AIホストがインターネット上の情報から勝手な意見や事実に基づかない情報(ハルシネーション)を付け加えることはありません。これにより、研究や学習など、情報の正確性が求められる場面でも、比較的安心して利用できる設計になっています。
2. 使ってみよう!NotebookLM 音声概要の使い方 ステップガイド
音声概要機能の使い方は、NotebookLMのインターフェース内で比較的簡単に行えます。
ステップ1:音声概要を生成する
NotebookLMを開く

WebブラウザでNotebookLM (notebooklm.google.com) にアクセスし、Googleアカウントでログインします。
ノートブックとソースの準備
音声概要を作成したいノートブックを開くか、新規に作成し、要約・解説してほしい資料(PDF、Googleドキュメントなど)をソースとしてアップロードします。

生成ボタンをクリック
画面右側の「Studio」パネル(またはそれに類するエリア)にある「Notebook guide」セクションを開きます。その中に「Audio Overview」という項目があるので、「Generate」ボタンをクリックします。

(任意)カスタマイズ
「Customize」ボタンが表示される場合、クリックして最大500文字程度の指示プロンプトを入力できます。これにより、「〇〇のトピックに焦点を当てて解説してほしい」といったように、生成される音声の内容をある程度コントロールできます。
待機
音声概要の生成には、ノートブックに含まれる資料の量に応じて数分程度かかる場合があります。完了を待ちます。(注:音声概要の生成や削除には、そのノートブックに対する編集権限が必要です。)
ステップ2:生成された音声概要を聴く
- 音声概要が生成されると、「Audio Overview」セクションにオーディオプレーヤーが表示されるか、「Load」ボタンが表示されます。「Load」ボタンの場合はクリックして読み込みます。
- オーディオプレーヤーの再生ボタンを押せば、AIホストによる対話形式の音声概要を聞くことができます。
ステップ3:音声概要を共有する
生成した音声概要は、他の人と簡単に共有できます。
- 「公開共有URL」:プレーヤーの共有アイコンをクリックすると、誰でもアクセスできる公開リンクを作成できます。(注:個人アカウントでのみ利用可能で、Workspace Enterprise/EDUアカウントでは現在無効。リンク作成後に非公開にすることも可能。)
- 「ノートブック共有」:ノートブック自体を共同編集者などと共有すれば、共有相手も自身の画面から同じ音声概要を読み込んで聞くことができます。
- 「音声ダウンロード」:プレーヤーのメニュー(多くは3つのドットアイコン)から「Download」を選択すれば、音声ファイル(MP3など)としてダウンロードできます。ダウンロードしたファイルをメール添付などで共有することも可能です。
ステップ4:インタラクティブモードで対話する(ベータ版・英語のみ)
新しく生成された音声概要では、現在ベータ版として「インタラクティブモード」が提供されています(英語のみ)。
- 音声概要プレーヤーにある「Interactive mode (BETA)」ボタンをタップして再生を開始します。
- 再生中に「Join」ボタンをタップすると、AIホストが会話に参加するよう促してきます。
- あなたが音声で質問をすると、AIホストはアップロードされたソースに基づいてパーソナライズされた回答をしてくれます。
- 回答が終わると、元の音声概要の再生が再開されます。
これにより、単に聞くだけでなく、聞きながら疑問点をその場で解消していく、より能動的な学習体験が可能になります。日本語への対応も期待される機能です。
3. 音声概要の主な機能と特徴:ただの読み上げじゃない!
NotebookLMの音声概要機能は、単なるテキスト読み上げとは異なる、ユニークで便利な特徴を備えています。
- 「インタラクティブモード(ベータ版・英語のみ)」:音声でAIホストに質問し、パーソナライズされた回答を得られる未来的な機能。
- 「幅広い言語サポート」:音声出力は日本語を含む50以上の言語に対応。グローバルな情報収集や多言語学習に非常に役立ちます。設定メニューから好みの出力言語を選択できます。
- 「AIホストによる対話形式」:2人のバーチャルホストが内容を要約し、関連性を指摘しながら会話を進めるため、飽きにくく、内容が頭に入りやすいです。
- 「ダウンロード可能」:生成した音声ファイルはダウンロードできるため、オフライン環境で聞いたり、他のデバイスに転送したりと、柔軟な活用が可能です。
- 「指示プロンプトによるカスタマイズ」:生成前に簡単な指示を与えることで、音声概要で特に焦点を当ててほしいトピックを指定できます。
4. 音声概要を利用するメリット:学習・仕事・アクセシビリティが変わる
NotebookLMの音声概要機能は、私たちの情報との向き合い方に多くのメリットをもたらします。
- 学習効率の向上
- 通勤・通学中や家事の最中など、耳が空いている時間を活用した「ながら学習」が可能に。
- 聴覚から情報をインプットする方が得意な学習者にとって、内容の理解と記憶の定着を助ける。
- 難しい資料を読む前に、まず音声概要で全体像を掴むことで、その後の読解がスムーズに。
- 生産性の向上
- 大量の文書やレポートを読む時間を節約し、AIが要約・解説してくれる音声を聞くことで、要点を素早く把握。
- 会議の議事録やプロジェクトの関連資料などを、移動中などに耳で確認し、時間を有効活用。
- アクセシビリティの向上
- 視覚に障がいのある方や、細かい文字を読むのが困難な方、ディスレクシアなど文字を読むことに困難を感じる方々も、情報に音声でアクセスできるようになる。
- 多言語対応により、母国語以外の言語で書かれた資料の内容理解をサポート。
- コンテンツ作成・再利用
- 自分が書いたブログ記事やレポートなどをNotebookLMに読み込ませ、音声概要を生成すれば、それをポッドキャストコンテンツとして再利用し、新たな読者層にリーチできる。
5. 知っておくべき制限事項と注意点
便利な音声概要機能ですが、利用にあたっては以下の点を理解しておく必要があります。
- 「実験的な機能であること」:音声概要はまだ開発途上の実験的な機能と位置づけられています。そのため、予期せぬ動作や品質のばらつきが生じる可能性があります。
- 「不正確さや音声の不具合」:AIが内容を完全に正確に要約・解説するとは限りません。また、音声が途中で途切れたり、イントネーションが不自然になったりといった技術的な不具合が発生する可能性もあります。
- 「生成にかかる時間」:特に大量の資料を含むノートブックの場合、音声概要の生成には数分以上の時間がかかることがあります。
- 「言語サポートの現状」:多くの言語に対応していますが、インタラクティブモードは現在英語のみです。また、非英語言語の音声品質や機能は、まだベータ版レベルである可能性があります。
- 「カスタマイズの制限」:現時点では、AIホストの声の種類を選んだり、生成された音声の特定の部分を編集したりといった、細かいカスタマイズ機能は限定的です。
- 「ユーザーからの懸念」:一部のユーザーからは、音声が途中で中断したり繰り返されたりする、内容が表面的すぎる、AIがトピックを誤解したり存在しない内容を作り上げたりする、といった品質に関する問題点が報告されている場合もあります。
- 「ファクトチェックの重要性」:音声概要はあくまで「要約」であり、AIによる「解釈」が含まれます。重要な情報については、必ず元のソース(資料)にあたり、内容の正確性を自分の目で確認することが不可欠です。音声概要だけを鵜呑みにするのは避けましょう。
6. NotebookLM 音声概要と他の音声ツールの比較
NotebookLMの音声概要機能はユニークですが、他の音声関連ツールと比較するとどうでしょうか?
- 「vs 一般的なテキスト読み上げツール」:OS標準機能やブラウザ拡張機能などの読み上げツールは、選択したテキストをそのまま読み上げるのが基本です。NotebookLM音声概要は、内容をAIが理解・要約し、さらに「対話形式」で解説してくれる点が大きく異なります。
- 「vs ポッドキャスト自動生成ツール」:より高度なポッドキャスト制作ツールは、BGMの挿入、効果音、詳細な音声編集、複数話構成の管理など、音声コンテンツ制作に特化した機能が充実しています。NotebookLM音声概要は、そこまでの編集機能はありませんが、「資料に基づいて自動で要約・対話コンテンツを生成する」点に特化しています。
- 「ツールの組み合わせ」:NotebookLMで生成した音声概要をダウンロードし、それをDescriptやElevenLabsのような高機能な音声編集・音声合成ツールでさらに加工・編集するといった、複数のツールを組み合わせる活用方法も考えられます。
NotebookLM音声概要は、「自分が持っている資料の内容を、手軽に、分かりやすく、耳からインプットするためのツール」として非常にユニークな価値を持っています。
7. まとめ:NotebookLM 音声概要で、情報インプットを新しいスタイルへ
Google NotebookLMの「音声概要(Audio Overviews)」機能は、私たちが資料や情報と向き合う方法に、新しい選択肢をもたらしてくれます。AIホストが対話形式で内容を解説してくれるポッドキャスト風の音声は、単なるテキストの読み上げを超えた、新しい情報インプット体験を提供します。
学習効率の向上、時間の有効活用、アクセシビリティの改善など、そのメリットは多岐にわたります。50以上の言語に対応している点も、グローバル化が進む現代において大きな魅力です。
ただし、まだ実験的な機能であるため、制限事項や注意点を理解し、AIが生成した内容のファクトチェックを怠らないことが重要です。
今後、インタラクティブモードの多言語対応や、さらなる機能改善、品質向上が期待されます。NotebookLMの進化に注目しつつ、まずはこのユニークな「聞く」リサーチ・学習スタイルを試してみてはいかがでしょうか。あなたの情報収集・理解プロセスが、より豊かで効率的なものになるかもしれません。
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