人材開発支援助成金でリスキリング|申請方法・2026改正まとめ
「AI研修やDX研修を導入したいが、費用がネックになっている」という担当者の方へ。本記事では、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」を使って研修費用の最大75%を国に負担してもらう方法を、2026年度の最新改正(8月3日改正含む)に対応した形で解説します。
AI研修を助成金申請に活用したい法人担当者の方はぜひ参考にしてください。
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」とは
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、DX推進・新規事業展開・GX(グリーントランスフォーメーション:カーボンニュートラルに向けた企業変革)に伴う従業員のスキルアップ研修に対して、国が経費の一部を助成する制度です。
厚生労働省が管轄しており、法人・個人事業主を問わず「雇用保険適用事業主」であれば申請できます(個人事業主本人は対象外で、雇用している従業員が対象です)。以下に対象訓練の種類と制度期限を確認します。
対象となる訓練の3類型
このコースでは、以下の3種類の訓練が助成対象になります。
① 事業展開に伴う訓練
新規事業立ち上げや事業転換に必要なスキルを習得するための研修。例えば、EC事業を新たに立ち上げる際のデジタルマーケティング研修などが該当する。
② DX化に伴う訓練
デジタルトランスフォーメーション(組織全体の業務をデジタル技術で変革・効率化すること)に必要な知識・技術を習得するための研修。AI研修やデータ分析研修が代表的な例。
③ GX化に伴う訓練
脱炭素・エネルギー転換に向けた事業変革に関連する研修。2026年3月2日からは「人事・人材育成計画に基づく訓練」も新たに追加されている(計画書類の提出が必要)。
制度の期限:2026年度末(2027年3月)で終了
本制度は令和4〜8年度(2022〜2027年3月)の時限措置です。2026年度末(2027年3月31日)で制度が終了する予定であり、現行の助成率・上限額で申請できるのは今年度が最後になります。
計画届は訓練開始の1ヶ月前までに提出が必要なため、訓練期間の設定によっては実質2026年内に動き出す必要があります。
制度を活用するなら今年度が最後のチャンス。2027年3月末に向けてスケジュールを逆算して動き始めることが重要です。
助成額の早見表|中小企業は経費の75%が返ってくる
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」では、経費助成と賃金助成の2種類が受け取れます。企業規模(中小・大企業)によって助成率と限度額が異なるため、事前に計算しておきましょう。
助成率と賃金助成(中小企業・大企業別)
| 区分 | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間あたり) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円 |
| 大企業 | 60% | 500円 |
※賃金助成は所定労働時間内の訓練(OFF-JT:職場の外での集合研修・座学等)が対象。eラーニング・通信制の訓練は賃金助成の対象外です。
経費助成の限度額(訓練形態・時間別)
経費助成には1人1訓練あたりの上限額が設けられています。訓練形態や時間数によって上限が変わります。
| 訓練形態 | 訓練時間 | 中小企業の上限額 | 大企業の上限額 |
|---|---|---|---|
| 座学・集合研修(OFF-JT) | 100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 座学・集合研修(OFF-JT) | 100〜200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 座学・集合研修(OFF-JT) | 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
| eラーニング・通信制 | 問わず(一律) | 15万円 | 10万円 |
| 定額制サービス | 問わず | 2万円/人/月 | 同左 |
※本記事の助成額・制度情報は2026年9月時点の厚生労働省公式情報をもとにしています。制度は改正が頻繁なため、最新情報は必ず管轄の労働局でご確認ください。
助成シミュレーション(中小企業・AI研修・社員5名の場合)
研修費用として1人30万円の外部AI研修(集合研修・40時間)を5名に受講させた場合の試算を示します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 研修受講料(30万円×5名) | 150万円 |
| 経費助成(75%) | ▲112.5万円 |
| 賃金助成(1,000円×40時間×5名) | ▲20万円 |
| 実質負担額 | 約17.5万円 |
研修費用150万円のうち約88%が助成金でカバーされる計算です。ただし、助成額は申請内容や審査状況によって変わるため、あくまで目安として参考にしてください。
設備投資加算(中小企業限定・2026年度新設)
2026年度から新設された加算制度で、リスキリング研修と合わせてAI開発用設備等を導入する場合に上乗せ助成が受けられます。AI研修と組み合わせて活用できる可能性があります。
- 助成率:導入費用の50%
- 上限額:受講者1人あたり15万円(受講者10人以上の場合は150万円が上限)
- 対象外:PC・スマートフォン・汎用事務機器等
2026年度に入って何が変わった?最新改正3つを解説
2026年度は3月・4月・5月・8月と複数回にわたって制度改正が行われました。特に2026年8月3日の改正は、AI・DX研修を助成金で活用したいと考えている企業にとって重要な変更点です。改正内容を知らずに申請を進めると不支給になるリスクがあるため、必ず確認してください。
改正①:疎明書(様式第28号)が必須化(2026年5月14日〜)
受講料の価格設定の妥当性を証明する「疎明書(様式第28号)」の提出が義務化されました。他社の見積書など、市場価格の根拠となる書類を準備して添付する必要があります。
2026年6月時点では電子申請システム(jGrants)への正式な対応が追いついておらず、「その他管轄労働局長が必要と認める書類」欄での添付が暫定的な対応となっています。申請前に管轄の労働局に確認することをお勧めします。
改正②:eラーニングの助成上限引き下げと回数制限(2026年8月3日〜)
eラーニング・通信制訓練については、以下の2点が変更されました。
経費助成上限額の変更
改正前は訓練時間に応じて段階的に上限額が上がる仕組みでしたが、改正後は訓練時間にかかわらず一律で中小企業15万円・大企業10万円に引き下げられました。
受講回数の制限
同一の労働者がeラーニングで助成を受けられる回数が1年度につき原則1回までに制限されました(集合研修・座学は年度3回まで)。複数のeラーニング研修を同一年度に受けさせても、2本目以降の助成は受けられません。
改正③:AI・DX研修の「汎用的内容」が対象外に(2026年8月3日〜)
今回の改正で最も影響が大きいのがこの変更です。従来はAI・DX・GX研修であれば幅広く助成対象でしたが、「職業人として共通して必要となる汎用的な内容」は助成対象外と明確に規定されました。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| ✅ 対象(業務直結型) | 「生成AIを使って営業担当者が商品提案書を作成する方法」 |
| ✅ 対象(業務直結型) | 「DXプロジェクトリーダー向けのデータ分析・活用研修」 |
| ❌ 対象外(汎用的内容) | 「生成AIの基礎・汎用プロンプトの作り方」(業務との紐づけなし) |
| ❌ 対象外(汎用的内容) | 「DX・AIの概念・概要を学ぶ入門コース」 |
研修タイトルに「AI」「DX」「生成AI」と入っていても、対象者の特定の職務に直接必要な内容かどうかが問われます。研修プログラムを選ぶ際は、自社の事業展開・DX計画と明確に紐づいた内容であることを確認してください。
※なお、2026年8月2日以前に訓練機関との契約・申込を済ませていたものは経過措置として従来のルールが適用されます(補助金ポータル、2026年9月10日更新)。
AI研修を助成金申請に使う場合は「業務に直結しているか」が判断の分かれ目。入門・概念理解のみの研修は2026年8月以降の新規契約分から対象外です。
申請の流れ|計画届から支給まで6ステップ
人材開発支援助成金の申請は、計画届の提出→訓練実施→支給申請という大きな流れで進みます。各ステップの期限と注意点を確認しておきましょう。
STEP1〜2:計画届の提出(訓練開始の1ヶ月前が絶対厳守)
申請で最も多いミスが「計画届の提出期限オーバー」です。計画届は訓練開始日の1ヶ月前までに所轄の都道府県労働局または電子申請(jGrants)で提出しなければなりません。1日でも過ぎると全額不支給になるため、余裕をもって動くことが重要です。電子申請にはGビズIDプライムの取得が必要で、発行に2〜3週間かかる場合があります。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| STEP1 | 事業展開計画・訓練内容を整理する(DX推進計画等との関連性を明確化) | 1〜2週間 |
| STEP2 | 計画届を労働局またはjGrantsで提出する | 訓練開始の1ヶ月前まで(厳守) |
STEP3〜4:訓練実施と受講管理
計画届が受理されたら、計画通りに訓練を実施します。訓練内容を途中で変更する場合は、必ず事前に変更届を提出してください(無断変更は不支給の原因になります)。受講記録は出勤簿と1分単位で一致させてリアルタイムで管理することが重要です。
| ステップ | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| STEP3 | 計画通りに訓練を実施する | 内容変更は事前に変更届が必要 |
| STEP4 | 受講記録・出勤簿・領収書等を整備する | 出席管理は1分単位でリアルタイム記録 |
STEP5〜6:支給申請と審査待ち
訓練が終了したら、2ヶ月以内に支給申請書類を提出します。この期限も厳守事項で、遅れると不支給になります。審査には2〜3ヶ月程度かかるため、助成金の入金は申請から数ヶ月後になることを見込んでおいてください。
| ステップ | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| STEP5 | 支給申請書類を労働局またはjGrantsで提出する | 訓練終了後2ヶ月以内(厳守) |
| STEP6 | 審査・支給を待つ | 2〜3ヶ月程度 |
支給申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 訓練実施結果報告書
- 訓練費用の領収書・振込明細(現金払い不可)
- 修了証・修了証明書(訓練機関発行)
- 賃金台帳・出勤簿
- 疎明書(様式第28号)※2026年5月14日以降の申請は必須
- 事業展開の進捗がわかる資料(このコース特有の提出書類)
AI研修でリスキリング助成金を使う場合の注意点
2026年8月3日の改正を受け、AI研修を助成金申請に活用する際には慎重な内容精査が必要になりました。研修プログラム選びの段階から、助成対象要件を意識することが重要です。
対象になるAI研修・対象外のAI研修の見分け方
| 区分 | 具体例 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| ✅ 対象(業務直結型) | DX推進担当向けデータ活用・AI実践研修 | 特定の職務・業務に紐づいている |
| ✅ 対象(業務直結型) | 営業部門向け生成AIを活用した商談資料作成研修 | 受講後すぐに特定業務で活用できる |
| ❌ 対象外(汎用型) | 「生成AIとは何か」「プロンプトの基本」を学ぶ入門コース | 業務への直結が薄い |
| ❌ 対象外(汎用型) | 全従業員向けAIリテラシー基礎研修 | 職業人共通の内容で個別業務に紐づかない |
AI研修で助成金を活用するための3つのポイント
助成金申請に通るAI研修を選ぶ・設計するうえで、以下の3点を意識してください。
① 業務ユースケースが明確に定義されている
研修内容に「自社の〇〇部門で◆◆業務にAIを活用する」という具体的なユースケースが含まれているプログラムを選ぶことが重要です。汎用知識の習得が目的ではなく、業務改善の手段としてAI研修を位置づけることが採択の鍵になります。
② OFF-JT要素が10時間以上含まれている
人材開発支援助成金ではOFF-JT(職場外での座学・演習・外部研修など)を10時間以上実施することが前提要件です。eラーニングのみで構成されている場合は助成上限が15万円(中小)に制限され、賃金助成も受けられません。座学やワークショップを組み合わせた体系的なプログラムが理想的です。
③ DX・事業展開計画との関連性を説明できる
計画届を作成する際、「なぜこの研修が自社のDX推進に必要か」を具体的な数値目標付きで記述できることが採択のポイントです。たとえば「月間業務時間120時間を45時間(62.5%減)に削減するため、営業部門10名にAIを活用した業務効率化研修を実施する」のように記載すると審査評価が上がります。
法人向けAI研修の選択肢として、株式会社KAGEMUSHAが提供するAI研修(インタラクティブ研修)があります。営業・人事・マーケティング・総務など部門別のユースケースに特化したカリキュラム設計が特徴で、「どの部門でも業務ですぐ使える」をゴールに据えた内容になっています。
汎用的な概念学習ではなく業務直結型の研修設計のため、事業展開等リスキリング支援コースの対象要件を満たしやすい設計です。研修導入を検討している場合は、問い合わせの際に助成金活用の希望を伝えてみてください。
また、AI開発・DX支援会社の比較記事も参考にしながら、自社のDX計画に合った研修・支援会社を選定することをお勧めします。
申請前に確認!ありがちな不備6選
申請実務においてよく指摘される不備をまとめました。計画届の提出前に以下のチェックリストで確認してください。
不備1〜3:申請・書類管理のミス
不備1:計画届を訓練開始後に提出してしまう(最多・最致命的)
訓練を開始してしまった後に計画届を提出しても全額受け取れません。研修の実施スケジュールが決まったら、まず計画届の提出期限を逆算し、余裕をもって動き始めることが最重要です。GビズIDプライムの取得に2〜3週間かかることも考慮に入れてください。
不備2:事業展開との関連性が薄い
「AI・DX研修をやりたいから」という理由だけでは採択されません。「自社の〇〇事業展開計画に基づき、△△部門が□□業務をAI化するために必要な技術を習得する」という具体性が求められます。事業計画書レベルの内容を計画届に落とし込む意識が必要です。
不備3:出席管理がずさん
受講ログ・出勤簿が1分単位で一致していないと審査を通過できません。後から整合性を取ることは事実上不可能なため、訓練中からリアルタイムで記録を残してください。eラーニングの場合も、システムの受講ログを必ず保存しておきましょう。
不備4〜6:2026年度の新要件・書類不備
不備4:疎明書(様式第28号)を忘れる(2026年度新要件)
2026年5月14日以降の申請では必須書類です。受講料の市場価格妥当性を証明するために、他社の見積書等を事前に準備しておく必要があります。
不備5:訓練内容が計画届の内容と異なっている
実際の研修内容が計画届の内容と食い違っていると不支給になります。やむを得ず変更する場合は、必ず事前に変更届を提出してください。研修会社との打ち合わせ段階でカリキュラムを固めてから計画届を提出することをお勧めします。
不備6:領収書が不十分
助成金の審査では、領収書・振込明細・請求書・契約書の3〜4点セットが揃っていることが理想です。現金払いは原則認められません。銀行振込で支払い、振込明細を必ず保管してください。
申請代行は社会保険労務士の独占業務です。書類作成に不安がある場合や採択率を上げたい場合は、社労士・中小企業診断士への相談(費用目安10〜30万円)も選択肢の一つです。
よくある質問(FAQ)
Q. 事業展開等リスキリング支援コースは何名から申請できますか?
1名から申請できます。最低受講者数の制限はありません。ただし、計画届や書類準備の工数を考えると、複数名での申請のほうがコストパフォーマンス上は有利です。
助成額は受講者数×助成率(75%等)で積み上がるため、受講者が多いほど総助成額も大きくなります。
Q. ChatGPTやCopilotの使い方研修は助成対象になりますか?
2026年8月3日の改正以降、特定の職務に紐づかない「AIの基礎・プロンプト入門」などの汎用的内容は助成対象外です。一方、「営業部門向け・生成AIを使った商談資料作成研修」や「DXプロジェクトリーダー向けデータ活用研修」など、業務に直結した内容であれば対象になります。
研修を選ぶ際は、どの部門のどの業務に活用するかを明確にすることが採択の鍵です。
Q. 助成金が入金されるのはいつ頃ですか?
支給申請後、審査に2〜3ヶ月かかります。訓練終了後2ヶ月以内に申請する必要があるため、訓練終了から入金まで半年前後かかるケースが多いです。
先払いで研修費用を支出することになるため、助成金入金前の資金繰り計画を立てておくことが重要です。
まとめ|2026年度末が申請ラストチャンス
本記事で解説した人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」のポイントを整理します。
- 助成率:中小企業75%・大企業60%(経費)+賃金助成あり(集合研修のみ)
- 制度終了:令和8年度末(2027年3月)が最終年度。今年度が実質最後の申請機会
- 2026年8月3日改正:AI・DX研修の「汎用的内容」は対象外。業務直結型のみ助成対象
- eラーニング:上限15万円(中小)・1年度1回まで
- 最重要ルール:計画届は訓練開始の1ヶ月前まで(1日でも遅れると全額不支給)
2026年度末で制度が終わることを考えると、今年度中に計画届を提出して研修を実施することが現実的に最後のチャンスです。
AI・DX推進に向けた従業員教育を検討している企業は、ぜひ本制度を活用してください。AI研修の具体的な内容や助成金申請に適したカリキュラム選びについては、AI研修会社の選び方・比較記事も参考にしていただければと思います。
